更新日:2025年12月23日
2025年の熊事件をデータで読み解く|被害・出没の多い地域の実体とその背景
今年も残すところ、あとわずかとなりました。2025年は、熊に関するニュースを目にする機会が例年より明らかに多い一年でした。
各地で相次ぐ出没情報や人身被害の報道を受け、「今年は熊が多い」という印象を持った方も少なくないと思います。実際、発表された「今年の漢字」に「熊」が選ばれたことも、こうした印象の強さを象徴する出来事でした。
こうした感覚的な印象を、客観的なデータで確認してみると、環境省が公表している出没数や被害件数の速報値では、2025年は熊の出没数・人身被害ともに過去と比べても高い水準にあり、数値の面から見ても特異な年であったことが分かります。一方で、個々のニュースや事件については断片的に記憶していても、「どの地域で、どのような被害が起きていたのか」「例年と比べて何が違ったのか」を体系的に振り返る機会は多くありません。
そこで本記事では、2025年に起きた熊の事件・被害ニュースをあらためて整理し、過去の事例やデータと比較しながら、実際に例年と比べてどのような変化があったのかを解説していきます。あわせて、なぜここまで熊の出没数や被害が増えたのかについても、公開されているデータを基に整理します。
この記事が、日々流れていくニュースを少し深く理解するための一助になれば幸いです。
2025年の熊の出没状況
2025年の熊の出没数は、環境省が公表している速報値データによると、10月末時点の集計で過去最多水準となっています。ここでは、この環境省の出没数速報値を基に、都道府県別の出没状況を整理するとともに、地域によって出没数に差が生じている背景について解説します。
熊の出没数は過去最多を大幅に更新
熊の出没数は、2025年10月末時点の速報値で過去最多を大きく更新しています。10月末時点の出没数は36,814件に達しており、前年(2024年)の20,513件と比べると約2倍に迫る水準です。また、これまで過去最多だった2023年の24,348件をも大きく上回っています。
このように過去のデータと比較すると、2025年の熊の出没数は突出して多く、例年とは明らかに異なる状況であることが分かります。
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都道府県別にみる熊の出没数
熊の出没数を地方別にみると、地域ごとに大きなばらつきがあることが分かります。東北地方では前年から約281%増と突出して増加していて、中部地方や関東地方ではおおむね2割前後増加しています。これに対し、関西地方や中国地方では、出没数が前年の半分以下となっています。
| 地方 | 2024年 | 2025年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 東北 | 6,723 | 25,632 | +281% |
| 関東 | 1,344 | 1,639 | +22% |
| 中部 | 5,166 | 6,336 | +23% |
| 関西 | 3,714 | 1,721 | −54% |
| 中国 | 3,555 | 1,480 | −58% |
| 四国 | 11 | 6 | −45% |
さらに都道府県別にみると、東北地方では6県すべてで出没数が前年の2倍以上となっています。中部地方では新潟県と富山県で前年の約2倍に増加し、岐阜県も30.4%増となりました。一方、関西地方では大阪府が前年より4件増加したのみで、その他の府県では出没数は増加していません。
このように、2025年の熊の出没増加は全国一律ではなく、特定の地方や県に集中していることが、データから読み取れます。
県ごとの個体数管理・対策体制の違い
地方や都道府県ごとに熊の出没数に大きな差が生じている背景には、個体数管理や対策体制の違いが影響している可能性があります。ひとつの見方として、東北地方と比べて、関西地方では熊の個体数管理が比較的進んでいる点が挙げられます。
熊はこれまで保護政策の対象となり、個体数の回復や増加を重視した管理が行われてきました。その中で、関西地方や中国地方では熊の個体数減少が課題となっていた時期があり、早い段階から捕獲や管理に関する対策やノウハウが蓄積されてきました。
一方、東北地方では長年にわたり熊の個体数が比較的安定していたため、積極的な個体数管理の必要性が低く、結果として個体数を過小評価していた可能性があります。こうした管理体制の違いが、地域ごとの出没数の差として表れていると考えられます。
この点以外にも、なぜ東北地方で熊が多いのかについては、
👇こちらの記事で詳しく解説しています。
2025年、熊被害が急増…突出する秋田・岩手で何が起きている?

2025年の熊による人身被害数(速報値)
2025年の熊による人身被害は、被害者数・死亡者数ともに全国的に増加傾向にあります。環境省が公表している速報値を見る限り、過去10年と比較しても高い水準にあることは明らかです。ただし、その増え方は全国で一様ではなく、都道府県別に見ると被害の集中や差がはっきりと表れています。以下では、被害者数や死亡者数の推移、ヒグマとツキノワグマの違いに注目しながら、2025年の特徴を整理していきます。
2025年の熊被害者数は11月末時点で過去10年最多
環境省が公表している速報値によると、2025年の熊による被害者数は11月末時点で230件に達しています。これは、これまで最多だった2023年の219件をすでに上回る水準です。前年の2024年は85件であったことを踏まえると、2025年は短期間で被害件数が急増した年であったことがわかります。本データは11月末時点の速報値であり、年間の確定値ではありません。今後の推移によっては、被害件数がさらに増加する可能性があります。
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2025年の熊被害死亡者数は過去最多の2倍超
2025年の熊被害による死亡者数は13人にのぼり、これは過去最多だった2023年の6人を大きく上回る数字です。また、前年の2024年は3人であったことから、わずか1年で4倍以上に増加したことになります。被害件数の増加に加え、死亡者数も高水準に達している点は、2025年の熊被害の大きな特徴のひとつです。
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ヒグマの被害者数は過去最多ではない
日本には、本州を中心に生息するツキノワグマと、北海道に生息するヒグマの2種類の熊がいます。熊による人身被害の総数については前述した通りですが、種類別に見ると、ヒグマによる被害は直近10年で過去最多という状況ではありません。
過去最多は2021年の14件で、2025年は6件と10年間で3番目の水準にとどまっています。2025年の被害件数は10年平均の4.9件を上回っているものの、同年に被害が大きく増加したツキノワグマと比べると、相対的には件数が抑えられていることがわかります。


被害者数が最も多いのは秋田県、次いで岩手県
2025年の熊による人身被害者数を都道府県別に見ると、最も多いのは秋田県で、11月末までの速報値で66人に達しています。次いで多いのが岩手県で、被害者数は37人です。
この2県だけで全国の被害者数の約44%を占めており、被害が特定の地域に集中している傾向が読み取れます。こうした状況を踏まえ、次に秋田県と岩手県で報道された熊被害のニュースを整理し、過去10年の推移とあわせて確認していきます。

秋田県で発生した主な熊被害事例
10月20日:湯沢市
JR湯沢駅周辺の市街地で、男性4人が相次いで熊に襲われました。1人が重傷、3人が軽傷とみられています。現場はいずれも市街地に近いエリアでした。
(出典:読売新聞オンライン 悲鳴聞いて外に出た男性クマに襲われ死亡、男女3人が頭などに重傷…秋田・東成瀬村で成獣1頭駆除)
10月24日:東成瀬村
男女4人が熊に襲われ、男性1人が死亡、残る3人も頭部や顔などに重傷を負いました。熊はその後、地元の猟友会によって駆除されています。死亡した男性は、他の被害者の悲鳴を聞いて屋外に出た際に襲われたとされています。
(出典:読売新聞オンライン 秋田・湯沢の市街地にクマ、男性4人が襲われけが…住民「ウソでしょと思うほど驚いた」)
11月16日:能代市
市中心部にある商業施設「イオン能代店」に熊が侵入しました。通報を受けて駆けつけた県職員が吹き矢で麻酔を施し、その後駆除されています。
(出典:読売新聞オンライン イオン能代店にクマ侵入、吹き矢で麻酔かけ駆除…鹿角市ではクマに襲われたとみられる女性死亡)
これらの事例を整理すると、本来は人の集団や生活音を避けるとされてきた熊が、市街地や商業施設といった人の活動が集中する場所に出没していることがわかります。また、複数人が同時に被害を受けるケースも確認されており、従来想定されていた熊の行動パターンとは異なる動きが目立っています。
岩手県で発生した主な熊被害事例
2025年の岩手県でも、住宅地や観光施設周辺で深刻な熊被害が相次いで報告されました。以下は、熊被害報道の一部です。
7月4日:北上市和賀町
81歳の女性が自宅の居間で倒れているのを、訪れた息子が発見し、110番通報しました。その後、死亡が確認されています。女性は普段着のままで、頭部を含む全身に動物の爪によるとみられる多数の傷がありました。室内には、熊とみられる足跡が複数残されていました。
(出典:朝日新聞 クマに居間で襲われたか、81歳女性が死亡 全身に多数の傷 岩手)
10月17日:北上市和賀町
北上市内の温泉施設近くの雑木林で、熊に襲われたとみられる遺体が発見されました。前日の16日、露天風呂の清掃中だった従業員の行方が分からなくなり、施設から通報があったことを受けて捜索が行われ、翌朝に遺体が見つかっています。
(出典:産経新聞 遺体は温泉施設従業員と確認、岩手県警 クマに襲われ死亡…「伝説のレフェリー」の過去も)
10月26日:住田町
住田町上有住の住宅で、住人男性から「飼い犬が熊に襲われたようだ」と通報がありました。現場付近には、犬を引きずったような跡や熊とみられる足跡が残されており、リードや首輪も落ちていたとされています。
(出典:読売新聞 「犬がクマに襲われたようだ」と通報、シバ犬を引きずったような跡…リードや首輪残される)
これらの事例から、岩手県でも住宅内部や観光施設周辺といった人の生活や仕事の場にまで熊が出没していることがわかります。また、人身被害にとどまらず、飼い犬などペットへの被害も確認されています。温泉施設の従業員が被害に遭った事例は、他の温泉地で宿泊キャンセルが相次ぎ発生するなど、観光業への悪影響といった二次的な被害にもつながりました。
熊と温泉地については👇コチラの記事で詳しく説明しています
熊が温泉地に現れる?被害事例と理由・安全に入れる温泉地まとめ

秋田県と岩手県は被害が多い年が続いている
2025年、熊による人身被害者数が47都道府県の中でも上位となっている秋田県と岩手県ですが、こうした傾向は今年に限ったものではありません。過去のデータを確認すると、両県はいずれも、例年熊による人身被害が他県と比べて多い状態が続いてきたことがわかります。
過去10年間の人身被害者数を都道府県別に見ると、秋田県は47都道府県の中で毎年6番目以内に位置しており、岩手県は毎年3番目以内に含まれています。
■過去10年間における熊による人身被害者数 上位10県

東北地方の熊については👇コチラの記事で解説しています。
2025年、熊被害が急増…突出する秋田・岩手で何が起きている?

熊被害が増加している要因
2025年に熊による被害者数が増加している背景には、個体数の増加だけでなく、複数の要因が重なっています。近年は熊の行動パターンの変化に加え、過疎化の進行によって森林管理や里山整備を担う人手が不足し、人の生活圏と熊の行動範囲が重なりやすくなっています。ここでは、こうした環境の変化を中心に、被害増加の要因を整理して解説します。
熊の行動範囲の拡大
熊は冬眠に備えて秋までに十分な皮下脂肪を蓄える必要があり、そのため広い範囲を移動しながら餌を探します。通常は人の生活圏を避けて行動しますが、必要な餌を十分に確保できない場合には、人里近くまで行動範囲を広げることがあります。
近年は熊の主要な餌資源であるドングリの不作が続いており、こうした餌不足が行動範囲の拡大を招き、人と熊の接触機会が増える一因になっていると考えられています。
(出典:長野県 クマの能力と食欲をあなどらない。)
熊の餌不足については👇コチラの記事で解説しています。
熊のエサ不足が深刻化…原因は人間だった?

熊の行動範囲については👇コチラの記事で解説しています。
熊の移動距離はどれくらい?1日の行動範囲に驚愕

人慣れ熊の増加
熊は本来、臆病で音に敏感な動物とされており、人の気配を感じると自ら距離を取って逃げる行動が一般的でした。そのため、熊鈴を鳴らしたり、ラジオの音を流したりすることで、人と熊の接触は回避できると考えられてきました。
しかし近年では、人の出す音に慣れ、人里に降りることで容易に餌を得られると学習した「人慣れ熊」や、いわゆる「アーバンベア」の増加が観測されています。こうした熊は人の生活圏への警戒心が薄く、結果として人身被害につながりやすくなることから、被害増加の要因の一つとして指摘されています。
人慣れ熊・アーバンベアについては👇コチラの記事で解説しています。
アーバンベアとは?意味・原因・被害状況をわかりやすく解説

過疎化による森林・里山管理の低下
熊の被害が多く報告されている東北地方は、過疎化や高齢化が進行している地域でもあります。出生率を見ても、秋田県・岩手県・福島県・青森県・山形県などでは、この10年ほどで大幅な減少がみられ、若年人口の減少が顕著です。
(出典:東洋経済クマ被害が止まらない東北、過去10年で少子化「ワースト5入り」の厳しい現実 )
こうした地域では、果樹園の管理が行き届かなくなったり、里山の整備や下草刈りが行われなくなったりするケースが増えています。その結果、野生動物が人の生活圏に入り込みやすい環境が生まれ、熊の生息域と人の居住地との境界が曖昧になってきました。
このように、森林や里山管理の担い手不足によって生じた環境の変化が、熊と人との距離を縮め、被害増加につながっていると考えられています。
(出典:東洋経済 相次ぐ被害「人を恐れないクマ」はなぜ増えた?最前線の研究者が教える「熊害が発生するワケ」と「遭遇時に身を守る対策」、そして共存への可能性)
F&Q
Q1. 2025年は本当に熊が「例年より多かった」と言える?
A. 環境省の速報値の10月末時点では、すでに2025年は出没数・人身被害ともに過去と比べても高い水準にあり、数値面で「多い年」だったと言えます。
Q2. 2025年は全国的に熊の出没が多かった?
A. 全国一律ではありません。地方別では東北が大きく増える一方で、関西・中国は前年より減っており、増加が特定地域に集中している点が特徴です。
Q3. 2025年に熊の出没数が最も多かった地域はどこ?
A. 地方別に見ると、東北地方が突出して多く、前年と比べて約281%増となっています。全国一律ではなく、特定の地域に出没が集中しているのが特徴です。
Q4. 2025年に熊の人身被害が最も多かった都道府県はどこ?
A. 環境省の速報値(11月末時点)では、被害者数が最も多いのは秋田県で、次いで岩手県です。どちらも全国の中で被害が突出しており、被害が特定地域に集中している点が2025年の特徴です。
※本データは速報値で、通年の確定値ではありません。
Q5. 秋田県・岩手県の熊被害は2025年だけ特別に多かったの?
A. 2025年は増加が目立ちますが、秋田県・岩手県は過去データを見ても、熊による人身被害が多い年が続きやすい地域です。2025年は「増えた年」ではあるものの、両県に被害が集まりやすい傾向自体は今年に限った話ではありません。
まとめ
ここまで、環境省が公表している速報値を基に、熊の出没数や人身被害者数を数値で確認し、都道府県別・地域別の傾向を整理してきました。また、2025年を象徴する代表的な熊被害ニュースを取り上げながら、例年の熊被害と何が違っていたのか、さらに熊の行動の変化についても解説してきました。
■ 本記事のまとめポイント
✅ 熊の出没数は過去最多を大幅に更新
2025年の熊の出没数は、10月末時点の速報値で36,814件、過去最多の2023年の24,348件を大きく上回り、前年(2024年)の約2倍に迫る水準
✅ 地域・都道府県別に見ると出没数には大きなばらつきがある
東北地方が前年から約281%増と突出。関西地方や中国地方では前年の半分以下
✅ 東北と関西・中国地方で出没数に差が出た背景
関西・中国地方では個体数管理や捕獲・対策のノウハウが比較的早く蓄積されてきた一方で、東北地方では管理の必要性が低いと考えられていた
✅ 熊による人身被害件数も過去最多水準
2025年の熊による人身被害者数は、11月末時点の速報値で230件に達し、これまで最多だった2023年の219件をすでに上回る
✅ 熊被害による死亡者数は過去最多の2倍超
2025年の死亡者数は13人で、過去最多だった2023年の6人を大きく上回る
✅ ヒグマの被害件数は過去最多ではない
ヒグマによる被害件数の過去最多は2021年の14件で、2025年は6件と10年間で3番目の水準
✅ 熊による人身被害が最も多いのは秋田県と岩手県
2025年の被害者数は秋田県が最多、次いで岩手県。2県だけで全国の被害者数の約44%
✅ 秋田県・岩手県は例年、熊被害が多い地域
過去10年間のデータでは秋田県は毎年47都道府県中6位以内、岩手県は毎年3位以内
✅ 熊被害増加の主な要因
熊被害増加の背景には、『餌不足による熊の行動範囲の拡大』『人慣れ熊の増加』『過疎化による森林・里山管理の低下』といった複数の要因が重なっている可能性
データを見ていくと、熊被害は東北地方に集中しており、数値をもとにあらためて熊事件の報道を整理してみることで、過疎化が進んだ地域における森林管理の課題や、熊の個体数管理の難しさなど、ただニュースを眺めているだけでは見えてこなかった部分が浮かび上がってきました。
私は関西在住ですが、正直なところ、身の回りで熊の出没や事件の話を聞くことはほとんどありません。そのため、これまでどこかで「自分には関係のない話」と感じていた部分もあったと思います。
ただ、以前別の記事でも触れたハンター不足の問題や、人慣れ熊が増えてきている現状を考えると、無関係だと思って行動しているうちに、思いがけないタイミングで熊と遭遇する可能性も、決してゼロではないと感じるようになりました。
2025年は、数値的にも感覚的にも「熊の話題が多い年」だったといえますが、この問題が来年になってすぐ解決するとは思えません。だからこそ、国や自治体が主導して、少しでも良い方向に状況を変えていってほしいと感じています。
このブログでも、もはや一部の地域だけの話題ではなくなりつつある熊に関する情報を、今後も引き続き発信していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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