熊の種類と大きさを比較|ヒグマ400kgは普通なのか

熊の生態

更新日:2025年12月17日

熊の大きさはどれくらい?ヒグマ400キロは普通なのか、日本と世界の熊を比較

2025年11月、北海道苫前町で体長約1.9m、体重約400kgとみられる巨大なヒグマが目撃され、その後捕獲されたという報道が注目を集めました。体重に換算すると成人男性の平均のおよそ6倍にあたり、「ヒグマはここまで大きくなるのか」と、私自身率直に驚きました。

同時に、日本に生息する熊は世界にいる熊と比べて大きいのか、また種類ごとにどのような特徴の違いがあるのかという疑問が自然と湧いてきました。報道では「巨大」という言葉が使われますが、その大きさが世界基準で見てどの位置にあるのかは、意外と知られていません。

この記事では、日本に生息する熊の種類を整理したうえで、体の大きさや分布といった観点から世界の熊と比較し、それぞれの特徴を解説します。

※ 危険性や対策を目的とした記事ではなく、分類・特徴・違いといった知識の整理に焦点を当てています。

熊という動物を客観的に理解するための材料として、読者の皆さんの知識を深める一助になれば幸いです。

熊は全部で何種類いるのか

熊はニュースなどで個別に注目されがちですが、まずは生物として「全体で何種類いるのか」を知ることで、ヒグマがどの位置づけにあるのかが見えてきます。ここでは、現在一般的に認識されている熊の種類数と、その数え方の考え方を整理します。

一般的に知られている熊は8種類

現在、生物学的に広く認識されている熊の種類は8種類です。この分類は、形態的特徴や遺伝的な違いをもとに整理されたもので、世界各地に分布する熊が含まれています。

具体的には、ヒグマ、ホッキョクグマ、アメリカクロクマ、ツキノワグマ、ナマケグマ、マレーグマ、メガネグマ、ジャイアントパンダの8種です。

これらは体の大きさや毛色、生息環境に大きな違いがありますが、いずれも食肉目クマ科に分類される共通の祖先を持つ動物です。ニュースで話題になるヒグマも、この8種類のうちの1種にあたります。

(出典:四国ツキノワグマ保護プログラム クマってどんな動物

「種類」と「亜種」の違いを簡単に整理

熊の数を調べる際に混乱しやすいのが、「種類」と「亜種」の違いです。種類とは、生物学的に繁殖や遺伝の特徴が明確に異なる単位を指します。一方、亜種は同じ種類に属しながら、地域差によって体格や毛色などに違いが見られる集団のことです。
(出典:WWFジャパン トラは世界に何種類?「亜種」を保全することの意味

たとえばヒグマには、エゾヒグマやグリズリーなど複数の亜種が存在しますが、これらはすべてヒグマという同一種に分類されます。そのため、「熊は8種類」と説明される場合は、亜種を含めず、基本となる種の数を示していると理解すると整理しやすくなります。
(出典:環境省 特定外来生物・特定(危険)動物へのマイクロチップ埋込み技術マニュアル

世界に生息する熊の種類一覧

熊は世界各地の多様な環境に適応しながら進化してきました。ここでは、現在生物学的に認識されている8種類の熊について、生息地や体格といった基本的な特徴を整理します。それぞれの違いを知ることで、熊という動物の多様性が見えてきます。


ヒグマ(ブラウンベア)

ヒグマはユーラシア大陸北部から北米にかけて広く分布する熊で、地域ごとにさまざまな亜種が存在します。体格は熊の中でも大型に分類され、体長は2メートル前後に達する個体もいます。毛色は褐色を基調とし、地域によって濃淡があります。森林地帯や山岳地帯、ツンドラなど幅広い環境に適応している点が特徴です。ホッキョクグマと並び大型種に含まれますが、陸上環境を中心に生活する点が大きな違いです。

(出典:ヒグマの会 ヒグマを知る


ホッキョクグマ

ホッキョクグマは北極圏周辺に生息する熊で、過酷な寒冷環境に適応した生態を持っています。体格は熊の中でも最大級で、オスは体重400〜600kg、最大で800kgに達する例もあります。体長は200〜250cmほどで、メスはやや小型です。陸生動物でありながら、生涯の多くを氷に覆われた海の上で過ごし、泳ぎが得意な点が大きな特徴です。主にアザラシの脂肪を中心に、セイウチや魚、水鳥なども捕食します。

(出典:WWFジャパン ホッキョクグマの生態と、迫る危機


アメリカクロクマ

アメリカクロクマは北米大陸の広い地域に分布する、よく知られた熊です。主に森林に生息していますが、山地や湿地など多様な環境でも見られます。木登りが非常に得意で、樹上を活発に利用する点が特徴です。名前に「クロ」とありますが、毛色は黒に限らず、青みがかったグレーや茶色、薄茶色など幅があり、ごくまれに白色の個体も確認されています。食性は幅広く、草や根、果実、昆虫を中心に、魚や哺乳類の死骸、人間の食料に由来するものを口にすることもあります。

(出典:NATIONAL GEOGRAPHIC 動物図鑑 アメリカクロクマ


ツキノワグマ(アジアクロクマ)

ツキノワグマはアジア大陸を起源とする熊で、イランやアフガニスタンといった西アジアから、日本、韓国、台湾など東アジアにかけて広く分布しています。胸元に白い三日月状の模様があることが名前の由来です。体格は中型で、頭胴長は110〜130cm、体重はオスで約80kg、メスで約50kgが平均とされています。雑食性ですが植物を主食としています。食物繊維を消化するための特殊な消化器官を持っていないので、硬くて繊維質の多い植物は避ける傾向があります。

(出典:WWFジャパン 日本に生息する2種のクマ、ツキノワグマとヒグマについて


ナマケグマ

ナマケグマはインドやスリランカなど南アジアの森林地帯に生息する熊で、毛が長くボサボサした独特の外見を持っています。主に夜行性で、単独で行動しながら昆虫や果実を探して歩き回ります。食性は昆虫食に強く特化しており、シロアリやアリを主な食料としています。湾曲した長いツメで硬いアリ塚を壊し、唇をストロー状にして獲物を吸い込む点が特徴です。果実や花も食べ、ハチの巣を落として利用することから「ハニーベア」と呼ばれることもあります。体長は約2メートルに達し、オスは140kg以上、メスは95kg前後とされています。

(出典:NATIONAL GEOGRAPHIC 動物図鑑 ナマケグマ


マレーグマ

マレーグマは東南アジアの森林地帯に生息する熊で、クマ科の中では最も小型の種類です。中国南部からインド東部、インドネシアにかけて分布し、単独で生活しています。胸部に金色や白色の斑点があり、この模様が太陽に見えることから「サンベア」とも呼ばれます。体長は約1.5メートル、体重は70kg前後と小柄で、樹上生活に適した体つきをしています。夜行性で、果実や昆虫、小動物などを食べ、長いツメや舌を使って餌を採る点が特徴です。

(出典:NATIONAL GEOGRAPHIC 動物図鑑 マレーグマ


メガネグマ

メガネグマは南米アンデス山脈の森林地帯に生息する熊で、南米大陸では唯一のクマとして知られています。目の周囲に黄色や白色の模様が現れることからこの名が付けられましたが、模様の形や有無には個体差があります。体格はクマ科では小型寄りながら、オスは体長約2メートル、体重150kgを超えることもあります。高地の湿潤な森林を好み、果実やサボテンなど植物を主に食べます。強いあごと幅広い歯を持ち、樹上で過ごす時間が長い点も特徴です。個体数についてのデータは十分でないが、野生に生息するのはわずか3000頭ほどと考えられている。

(出典:NATIONAL GEOGRAPHIC 動物図鑑 メガネグマ


ジャイアントパンダ

ジャイアントパンダはクマ科に属する大型哺乳類で、中国の標高約1,300〜4,000メートルに位置する山岳地帯に生息しています。黒と白のはっきりした体色が特徴で、学名 Ailuropoda melanoleuca もこの色彩に由来します。体長は120〜190cm、体重は85〜120kgほどです。主食はタケの幹や葉、タケノコで、これに適応した幅広い臼歯や、竹をつかみやすい親指状の手首の骨を持っています。ヒグマなどとは異なり冬眠は行いません。出生時の子は非常に小さく、野生での寿命は20年未満とされています。

(出典:WWFジャパン パンダの生態と、迫る危機について

 

日本にいる熊は2種類

日本に生息している熊は、ヒグマとツキノワグマの2種類です。ヒグマは北海道のみに分布しており、日本最大の陸生哺乳類として知られています。一方、ツキノワグマは本州の多くの地域に分布していますが、千葉県には生息していません。また、四国では生息が確認されているものの、その数は非常に少なく、分布は一部地域に限られています。なお、九州にもかつてツキノワグマが生息していましたが、2012年に絶滅しました。

北海道に生息するヒグマ

ヒグマは日本では北海道のみに生息する大型の熊で、世界的に見ても体格の大きい種に分類されます。

区分体長体重
オス約2.0m約150〜400kg
メス約1.5m約100〜200kg

体の大きさには個体差があり、年齢や栄養状態によって大きく異なります。

ヒグマは雑食性の動物で、春から秋にかけてはその時期に最も手に入りやすい食物を中心に、植物、果実、昆虫、動物性の餌などを幅広く摂取します。特に秋には、冬眠に備えて大量のエネルギーを蓄えるため、摂食行動が活発になります。

寿命は野生下でおよそ20~30年程度とされています。

(出典:札幌市 ヒグマの生態・習性

ツキノワグマが生息する地域

ツキノワグマは本州を中心に生息する中型の熊で、ヒグマと比べると体格は小さめです。

体の大きさ
・体長:約120〜145cm
体高:約60cm前後
体重:約60〜100kg前後(オスのほうが大きい傾向)
前足:長さ約16cm、幅約10cm
後足:長さ約14cm、幅約8cm

感覚能力
・嗅覚:犬と同程度に鋭い
・視覚:人と同程度、またはそれ以上とされる
・聴覚:高音には敏感だが、低音には比較的鈍感
・触覚:触毛の感覚はあまり鋭くなく、皮下脂肪が厚いため刺激に強い

運動能力
ツキノワグマは運動能力が高く、短時間であれば時速50km程度で走ることができます。泳ぎも得意で、爪がかかる場所であれば垂直に近い壁を登ることも可能です。一方で、ジャンプ力はそれほど高くありません。

食性と行動
ツキノワグマは雑食性ですが、ヒグマと比べると植物性の食物への依存度が高いとされています。主な食物には、ドングリなどの堅果類、キイチゴやヤマグワなどの果実、昆虫類、蜂蜜、花、木や草の若芽、ネマガリタケなどがあります。

食性は季節によって大きく変化し、6月にはネマガリタケ、10月にはドングリ類といったように、特定の食物を集中的に摂取する時期があります。甘いものを好む傾向があり、腐肉や人工物の匂いに興味を示すこともあります。

学習能力と体の柔軟性
ツキノワグマは学習能力が高く、環境への適応力にも優れています。体は柔軟で、狭い空間を通り抜けることができ、直径約44cmのドラム缶の中でも方向転換が可能とされています。

(出典:宮城県 ツキノワグマってこんな生き物です

F&A

Q1. 熊は世界に何種類いるのですか?

A. 現在、生物学的に広く認識されている熊は8種類です。

ヒグマ、ホッキョクグマ、アメリカクロクマ、ツキノワグマ、ナマケグマ、マレーグマ、メガネグマ、ジャイアントパンダの8種がクマ科に分類されています。

Q2. 日本に生息している熊は何種類ですか?

A. 日本に生息している熊はヒグマとツキノワグマの2種類です。

ヒグマは北海道のみに分布し、ツキノワグマは本州を中心に分布しています。

Q3. 世界で最も大きい熊はどの種類ですか?

A. 一般にホッキョクグマが最大の熊とされています。

オスでは体重400〜600kg、最大で800kg近くに達する記録もあります。

Q4. ヒグマは世界的に見て大きい熊ですか?

A. はい。ヒグマは世界的に見ても大型種に分類される熊です。

ホッキョクグマと並び、陸上で最大級の体格を持つ熊として知られています。

Q5. 「種類」と「亜種」はどう違うのですか?

A. 「種類」は生物学的に独立した分類単位で、「亜種」は同じ種類の中で地域差によって分かれた集団です。たとえばエゾヒグマやグリズリーは、いずれもヒグマという同一種の亜種にあたります。

Q6. ジャイアントパンダは本当に熊の仲間なのですか?

A. はい。ジャイアントパンダはクマ科に属する熊の一種です。

食性は特殊ですが、遺伝的・分類学的には熊に含まれています。

まとめ

ここまで、日本と世界に生息する熊の種類や体の大きさを整理してきました。

■本記事のポイント

熊は世界で8種類、日本には2種類が生息している

現在、生物学的に認識されている熊は8種類。そのうち日本に生息するのは、北海道のヒグマと本州・四国のツキノワグマの2種類のみです。ニュースで注目されるヒグマも、世界の熊の一種として位置づけられます。

ヒグマ400kgは「異常」ではなく大型個体の範囲内

ヒグマのオスは150〜400kg程度まで成長することがあり、400kg級の個体は珍しいものの、世界的に見て特異なサイズではありません。栄養状態や年齢によって体重には大きな幅があります。

世界最大の熊はホッキョクグマ

熊の中で最も体格が大きいのはホッキョクグマで、オスでは400〜600kg、最大800kgに達する例も報告されています。ヒグマはそれに次ぐ大型種に分類されます。

日本のヒグマは世界基準でも大型クラス

日本のヒグマは、世界の熊と比較しても小型ではなく、明確に「大型の熊」に分類されます。一方で、ホッキョクグマほど突出したサイズではありません。

ツキノワグマは中型で、ヒグマとは体格差が大きい

ツキノワグマは体重60〜100kg前後が一般的で、ヒグマと比べると一回り以上小さい中型の熊です。日本国内でも両者の体格差は明確です。


今回は、熊は全部で何種類いるのかという基本から、世界に生息する熊と日本に生息する熊をそれぞれ整理して紹介してきました。

世界最大の熊はホッキョクグマですが、日本に生息するヒグマも熊の中では大型の種類に分類されることが分かります。こうした体の大きさを知ることで、熊という動物が持つ存在感や、生態の特徴をより具体的にイメージできたのではないでしょうか。

個人的にも、改めて実物の大きさを確かめるために、動物園でヒグマを観察してみたいと感じました。

本記事が、熊という動物を客観的に理解するための材料として、皆さまの知識を深める一助となれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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