将来性に注目が集まる量子コンピュータ関連の米国銘柄まとめ

未分類

近年、次世代の計算技術として注目を集めている「量子コンピュータ」。この技術は従来のコンピュータでは処理が難しかった問題を高速かつ高精度で解決できる可能性を秘めています。そして今、量子コンピュータ分野に取り組む米国企業への注目が高まり、関連銘柄の株価も大きく動いています。

この記事では、量子コンピュータ 米国 銘柄に関連する代表的な企業5社について紹介します。それに先立ち、量子コンピュータ関連企業を比較・理解する際に重要な観点を整理し、あわせてその基盤となる2つの方式「量子ゲート方式」と「量子アニーリング方式」について簡潔に説明します。

量子コンピュータ関連銘柄を理解するための5つの視点

  • 技術方式(ゲート型、アニーリング型、フォトニクスなど)

  • 商用化の進展度(クラウドサービス、オンプレ納入、API提供など)

  • 顧客層(政府機関、民間企業、大学、研究機関)

  • 財務体質(赤字額と資金調達力、キャッシュフロー)

  • 市場評価(時価総額、株価動向、投資家評価)

上記5社はそれぞれ異なる技術分野や成長ステージにあり、比較することで量子業界の多様性が見えてきます。IonQやQCIは近年株価が大きく動いた例としても知られており、それぞれの企業が市場でどのように評価されているかを知るうえでの参考になります。

また、政府支援プロジェクトへの参画や、クラウドアクセスの利便性、ソフトウェアスタックの成熟度(ソフトウェア全体の構造や機能の充実度、開発者やユーザーにとっての使いやすさ)なども比較ポイントとなります。

量子ゲート方式とは?

量子ゲート方式というのは、普通のコンピュータが使う「論理ゲート」(たとえばANDやOR)と似た仕組みで、量子ビット(キュービット)に特別な操作をして計算を進めていく方法です。このとき「重ね合わせ」や「もつれ」といった、量子だけが持つ特別な性質を活かすことで、普通のコンピュータでは時間がかかるような難しい計算も、より速く解くことができるのが特徴です。

この方法は、さまざまなタイプの問題に使えるため、将来、今よりもずっと高性能な「ユニバーサル量子コンピュータ(どんな計算でもこなせる量子コンピュータ)」を開発するときにも大切な技術になると考えられています。IonQやRigettiといった企業が、この方式を使って量子コンピュータを作っています。

量子アニーリング方式とは?

一方、量子アニーリング方式は「最適化問題の解決」に特化した方法です。最適化問題とは、たとえば「どうすれば一番短いルートで荷物を配達できるか」や「どのスケジュールが一番効率的か」といった、いくつかの選択肢から最も良いものを選ぶ問題のことです。

この方式が比較的早く実用化された理由の一つは、量子ゲート方式に比べて構造が単純で、誤り訂正のような複雑な制御があまり必要なかったことです。また、特定の分野(組合せ最適化など)に限定されるものの、問題をうまく設定すれば、実際の業務で役立つ結果を出しやすかったため、早期から企業による導入が進みました。

この方式では、量子ビットの数が多い装置がすでに作られていて、一部の企業では実際のビジネスの中で使い始められています。代表的な企業としては、D-Waveという会社があります。

比較項目 量子ゲート方式 量子アニーリング方式
主な用途 汎用的な計算(化学シミュレーション、暗号解析など) 組合せ最適化(ルート最適化、スケジューリングなど)
演算の仕組み 量子ゲートによる論理演算 量子エネルギーの最小化により解を導出
技術の成熟度 まだ研究段階が中心、一部商用クラウド提供あり 比較的実用化が進んでおり、特定分野での利用実績が多数
代表企業 IonQ、Rigetti D-Wave
量子ビット数の傾向 数十〜数百量子ビット 数千量子ビット以上
長所 汎用性が高く将来性あり 実問題への応用が比較的容易で、即効性のある導入が可能
短所 ノイズの影響を受けやすく、エラー訂正が難しい 汎用性に欠け、特定の用途に限定されがち

それぞれの技術的特長や商用化の進展、投資対象としての見どころなどをわかりやすく紹介します。技術方式や市場ポジションの違いを踏まえながら、今後注目すべきトレンドについても掘り下げていきます。

## IonQは量子ゲート方式の先駆者でクラウド展開も加速中

イオントラップ方式による量子技術

IonQ(イオンキュー)は、量子コンピュータの中でも「イオントラップ方式」と呼ばれる技術を使っているアメリカの企業です。イオントラップ方式とは、イオンというとても小さな粒子を電気の力で空中に浮かせておき、そこにレーザーを当てて操作する方法です。この方法は、量子の状態を長く安定して保てるという強みがあります。

幅広いクラウド展開と政府連携

クラウドではAWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureなど主要プラットフォームに対応し、最新機「IonQ Forte」では実用指標であるアルゴリズム量子ビット(#AQ)36を達成しています。IonQはまた、米エネルギー省や空軍との共同研究や契約も進めており、国家安全保障や先端研究における存在感も増しています。

開発者支援と産業活用の広がり

加えて、自社クラウドでの独自提供や、開発者向けSDKの整備も進めており、量子アルゴリズムの設計環境としての利便性も向上中です。金融、物流、材料科学などの産業応用での導入も加速しており、今後の拡張性が非常に高いと評価されています。

上場と財務状況の推移

IonQは2021年にSPAC合併によりNYSEへ上場し、約20億ドルの評価額と6.35億ドルの資金を調達しました。サムスン、Mubadala、アマゾン、Googleなどが出資しています。売上は2022年に1,113万ドル、2023年に2,204万ドル、2024年には4,307万ドルと成長を続けていますが、2024年の純損失は3億3,164万ドルに達しました。財務的には負債ゼロで手元資金は5億ドル超。株価は2023年初の5ドルから2025年6月には40ドル台へ上昇し、時価総額は約107億ドルに達しました。今後も中長期的な視点が求められます。

## Rigetti Computingは量子チップの内製で差別化を図る超伝導方式の注目企業

自社製造チップによる技術優位

Rigetti(リゲッティ)は、アメリカの新しい技術会社で、量子コンピュータを作っています。この会社は「超伝導量子ビット方式」という、電気が抵抗なく流れる特別な素材を使って量子ビットを作る方法を使っています。

他の企業(たとえばIBMやGoogle)と同じように、この方法を使って精密な計算ができるようにしています。また、Rigettiは自分たちの工場でチップ(計算の中心となる部分)を作っているので、他の会社に頼らずに改良したり、工夫したりできるのが強みです。たとえば、チップの中で情報のやり取りをうまくコントロールするための特別な仕組みを入れるなど、より正確で安定した計算ができるように工夫しています。

最新チップ「Ankaa」と研究開発の進展

最新チップ「Ankaa」シリーズは84量子ビットを搭載し、ゲート忠実度は99%以上を達成。さらに2026年には1,000量子ビットのシステムを実現する計画を掲げています。DARPAやNASAとのプロジェクトにも参加しており、国防・宇宙用途への適用が期待されています。

クラウドサービスQCSの展開

Rigettiはクラウドサービス「QCS(Quantum Cloud Services)」を通じて、企業や研究機関に量子コンピュータへのアクセスを提供しています。このサービスでは、ユーザーがインターネット経由で量子計算を実行できるようになっており、専用のハードウェアを持たなくても量子技術を活用できる環境が整っています。

QCSは、量子プログラミングに必要なツールやライブラリも整備されていて、研究者や開発者が自分のアルゴリズムを試すための柔軟なプラットフォームとなっています。さらに、クラウド経由での利用により、さまざまな地域のユーザーが同時にRigettiの量子プロセッサにアクセスできるようになっており、教育・研究・商用開発といった幅広い用途に対応しています。

上場と財務状況の変化

Rigettiは2022年3月にSPAC合併でNASDAQに上場し、企業価値は約15億ドルとされました。しかし株価は上場後に低迷し、2023年初には1ドル未満に下落。これを受けて2024年に株式併合を実施し、上場基準を維持しました。2022年の売上は約13.6万ドル、純損失は約3,860万ドルと赤字が続いていますが、2024年末時点で約2億2,500万ドルの現金を確保し、負債はゼロです。株価は2025年6月に11ドル前後まで回復し、時価総額は約3億ドル。今後は量子ビット数の増加と商業応用の実現がカギとなります。

## D-Wave Systemsは量子アニーリング方式のパイオニアで商用化も先行

世界初の商用量子コンピュータを開発

D-Waveは量子アニーリング方式を用いた世界初の商用量子コンピュータを開発した企業で、4,400量子ビットを搭載した最新機「Advantage2」を2025年に提供開始しました。組合せ最適化に強みを持ち、フォードやJTなど多様な業界と実問題への応用を進めています。

Leapによるリアルタイムクラウド提供

同社はLeapというクラウドプラットフォームで、リアルタイムの量子計算を世界中に提供しています。さらにハイブリッドソルバー(量子コンピュータと通常のコンピュータを組み合わせて問題を解くプログラム)を強化し、古典コンピュータとの連携によって高難度の最適化問題にも対応可能としています。ユーザーは制約条件の多い大規模問題を短時間で処理可能になり、量子優位性の実現に近づいています。

政府機関へのオンプレミス提供

D-Waveは、ドイツやアメリカの政府・研究機関に対して、クラウドを使わず現地に設置する形(オンプレミス)での提供を進めています。たとえば、アメリカ・アラバマ州の防衛企業Davidson Technologies社では、量子コンピュータを社内に設置して実務で活用しています。また、ドイツのユーリッヒスーパーコンピュータセンター(Jülich Supercomputing Centre)でも導入が予定されており、安全保障や科学研究における実用性が高く評価されています。このような導入例は、量子アニーリング方式が実際のビジネスや国家プロジェクトに使われつつあることを示しています。

上場後の動向と財務状況

D-Waveは2022年8月にSPAC合併でNASDAQに上場し、企業価値は約16億ドルとされましたが、株価は低迷し2023年初には1.20ドル、時価総額は約1.4億ドルに落ち込みました。その後も下落が続き、株式併合などの対応を検討。一方で2023年末に初の製品売上が発生し、2025年1〜3月期には過去最高の四半期収益1,500万ドルを記録。2025年3月末時点で現金3億ドル以上を保有し、初の粗利益黒字も達成しています。株価は2025年6月現在で1桁ドル台後半まで回復し、今後は黒字化と商用展開の加速が注目されています。

## Arqit Quantumは量子安全暗号のソフトウェア企業として独自路線へ

衛星構想からソフトウェア型暗号へシフト

Arqit Quantumは当初、量子衛星を使った通信インフラの構築を目指していましたが、2022年末にその計画を中止し、現在はハードウェアを使わないソフトウェア型の量子安全暗号に注力しています。クラウド型プラットフォーム「QuantumCloud™」を核として、防衛、金融、ブロックチェーンといった分野への展開を進めています。

PQE技術とそのメリット

この企業の中核技術は「PQE(Post-Quantum Encryption)」であり、量子コンピュータが将来的に現在のRSAなどの暗号を解読するリスクに備えるための新しい暗号技術です。Arqitの技術はハードウェアに依存しないため、さまざまなデバイスに簡単に実装でき、企業や政府機関にとって有望なソリューションとなっています。

ネットワーク企業との提携と実用展開

Arqitは、Fortinet(フォーティネット)やJuniper(ジュニパー)といった有名なネットワーク機器メーカーと協力しています。これによって、Arqitの量子暗号ソフトウェアがすでに使われているネットワーク機器の中に取り入れられています。つまり、私たちの使うインターネットや通信の仕組みが、量子コンピュータが登場しても安全でいられるようにしているのです。このような取り組みによって、Arqitは「量子時代にも安心できるセキュリティ」を提供できる会社として注目されています。

上場後の展開と財務状況

Arqitは2021年にNASDAQに上場し、当初は量子衛星計画に多額の資金を投じていました。しかし戦略転換後、衛星開発の中止、人員削減、資産売却などを通じて経営の効率化を図りました。2023年度の収入は560万ドルで、そのうちQuantumCloud™関連は約64万ドルにとどまりましたが、増資によって4,450万ドルの現金を確保し、短期的な資金面では安定しています。

株価は一時1ドルを下回る低水準でしたが、2024年に1株を50株にまとめる株式併合を実施し、2025年6月時点では株価が約40ドルまで回復。時価総額は約3億ドルとなっています。一部からは技術の実効性に対する疑問の声もありますが、Arqitは量子耐性暗号の分野において先駆的な立場を維持しつつ、事業拡大を続けています。

##Quantum Computing Inc.はフォトニクス技術で大規模問題を高速解決

フォトニクスとは?

Quantum Computing Inc.(QCI)は**光量子(フォトニクス)**という、光を使って計算を行う技術を活用しています。これは、従来の量子コンピュータが冷却を必要とするのに対し、常温で動作可能な点が大きな特長です。

エントロピー量子コンピュータ「EQC」とは?

QCIはフォトニクス技術を活用した「エントロピー量子コンピュータ(EQC)」を開発する企業であり、この仕組みはエネルギー状態の分布(エントロピー)をうまく利用して計算を行うのが特徴です。冷却が不要な常温動作のマシン「Dirac」シリーズを展開しており、BMWの自動車センサー配置問題(複数の選択肢から最適な配置を見つける「組合せ最適化」と呼ばれる問題)でも成果を出しました。

NASAや政府機関との連携

QCIはNASAと一緒に人工衛星のデータを分析するプロジェクトに取り組んでいます。こうした技術は、インターネットを通じてクラウド上で使えるようになっていて、特別な機械がなくても使えるのが特徴です。また、QCIが作った「Qatalyst(カタリスト)」というソフトウェアは、問題を解くための設定から答えを出すまでを自動でやってくれる仕組みになっていて、量子コンピュータにくわしくない人でも使いやすくなっています。

将来展望:計測分野への拡張

さらに、将来は量子センサーや量子LIDAR(レーザー光を使って物体との距離や形状を測る技術)など、計測技術の分野にも進出する計画があります。たとえば、量子センサーは地震の予兆をより早くとらえたり、医療分野で非常に小さな変化を検出したりすることが期待されています。また、量子LIDARは自動運転車の周囲環境をより正確に把握する用途などにも活用が見込まれます。

こうした応用により、QCIは単なる量子計算企業ではなく、センシング(計測)や交通、医療など、さまざまな分野への技術提供が可能な企業としての広がりを見せています。

株価と財務状況の推移

QCIはNASDAQ上場の小規模量子コンピュータ企業で、2022年にQPhotonを買収し資産を拡大しました。2022年の売上は約13.6万ドル、純損失は約3,860万ドルでした。2023年以降はBMWやNASAとの協業で注目を集め、2024年には株価が急騰。2025年6月時点では株価18ドル、時価総額約26億ドルに達しています。現金残高はやや少なめながら、政府契約や投資家からの資金確保で安定を維持し、収益化と黒字転換に向けて成長途上にあります。2025年の株価は前年から急騰しており、NASAやBMWとの連携、政府案件の進展が市場からの期待を高めた要因とみられています。

 

まとめ

米国の量子コンピュータ関連銘柄は、将来的なテクノロジー革命を担う存在として中長期での投資先として注目されています。現時点ではどの企業も赤字状態にありますが、それぞれに異なる技術優位性と商用化戦略を持っています。

IonQ、Rigetti、D-Wave、Arqit、QCIといった代表的な企業は、それぞれ独自の技術的アプローチや市場戦略を持っており、今後の技術進展や市場ニーズによって評価が変化する可能性があります。

現在はまだ黎明期にありますが、すでにクラウドを通じて量子計算サービスを提供する企業もあり、技術の実用化に向けた動きが始まっています。この分野の動向を継続的にウォッチしておくことで、将来的なテクノロジーの方向性やビジネスチャンスの理解が深まるでしょう。

量子技術の社会実装はこれからが本格化すると考えられ、今後の発展を見据えて情報収集を続けることが重要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました