熊が九州にいないのはなぜ?驚きの歴史と現在の課題

熊・野生動物

更新日:2025年11月19日

九州で熊が絶滅した理由とは?歴史的背景・他地域との違い・今起きている野生動物被害まで解説

2025年、全国では熊による人的被害や目撃件数が過去最多ペースで報じられています。しかし、その一方で 「九州には野生の熊が生息していない」 ということはあまり知られていません。

では、なぜ九州だけ熊がいないのでしょうか。

本記事では、その背景となる歴史的経緯や、近年の周辺地域(特に山口県)の状況、九州へ上陸する可能性の有無について、わかりやすく整理します。あわせて、熊がいない九州で実際に問題となっている熊以外の野生動物についてもまとめました。

この記事で解説する内容は以下の通りです

  • 九州で熊が絶滅した歴史的経緯

  • 2025年の山口県における最新状況

  • 九州への上陸可能性についての専門家見解

  • 四国との違いから見える地域差

  • 熊以外に注意すべき九州の野生動物事情

ニュースをより深く理解するための一助となれば幸いです。それでは順を追って見ていきましょう。


九州に熊がいない理由【環境省が絶滅宣言】

結論を申し上げますと、九州には現在、野生のツキノワグマは生息していません。

ここでは、いつからいなくなったのか・過去に生息していた証拠・絶滅に至った理由 を整理して解説します。

2012年に環境省が正式に絶滅を宣言

環境省は2012年8月、第4次レッドリストにおいて、九州のツキノワグマを絶滅種として正式に認定しました。これは、九州固有の個体群が地域から完全に姿を消したことを意味します。

この判断の根拠となったのは、最後の確実な記録が1957年(昭和32年)だったという事実です。この年、子グマの死骸が発見されて以降、半世紀以上にわたって確実な生息確認がありませんでした。

(出典:朝日新聞 クマ絶滅の九州でも警戒 対岸の山口で目撃情報多数、海渡る可能性は

興味深いのは、1987年に大分県で捕獲された個体の存在です。「やはり九州にも熊がいた」と考えられそうですが、森林総合研究所などによる遺伝子解析の結果、この個体は福井県から岐阜県に分布するタイプと判明しました。つまり、本州から何らかの形で持ち込まれた可能性が高いということです。
(出典:朝日新聞DIGITAL「九州最後」のツキノワグマは本州産 遺伝子調査で判明

環境省は、九州固有のツキノワグマが50年以上確認されていないこと、そして生息に適した環境が維持されていないことを総合的に判断し、絶滅宣言に至りました。

九州で熊が絶滅した3つの主な理由

では、なぜ九州の熊は絶滅してしまったのでしょうか。主に3つの理由が指摘されています。

理由①:明治期以降の大規模な森林伐採

明治期に入ると、日本は急速な近代化を進めました。それに伴い、建築材や燃料としての木材需要が急増します。九州でも例外ではなく、広範囲にわたって森林伐採が行われました。

特に問題だったのは、熊が生活の基盤とする広葉樹林が次々と伐採され、人工林に転換されていったことです。広葉樹林はドングリなどの実をつけ、熊にとって重要な食料源となります。しかし、スギやヒノキといった針葉樹の人工林では、熊が食べられる餌が極端に少なくなってしまいます。

これは東北地方との大きな違いです。東北では広葉樹林帯が広く残ったため、熊の生息環境が維持されました。一方、九州では人工林化が進んだことで、熊にとって「住めない森」になってしまったのです。

(出典:Yahoo!ニュース 全国であいつぐクマ被害 九州で出没する可能性は? クマは海峡を越えることが出来る? 専門家の意見は

理由②:狩猟による乱獲

明治から昭和初期にかけて、熊は狩猟の対象として盛んに捕獲されました。熊の毛皮は防寒着として、肉は食用として、さらに内臓は薬用として高い需要がありました。特に熊の胆(くまのい)は漢方薬として珍重され、高値で取引されていたのです。
(出典:TRAFFIC 人とクマとクマノイと クマの価値って何? いなくなったら何が困るの?

九州特有の問題として、雪が少ない気候が挙げられます。東北や北陸では、冬になると深い雪に覆われ、熊が冬眠している穴を見つけることが困難です。しかし、九州は積雪が少なく、冬眠中の熊を見つけやすかったため、結果として過剰な狩猟につながり、絶滅につながったと考えられています。

この過剰な狩猟圧が、個体数の急激な減少を招いたと考えられています。
(出典:熊本NEWS 九州にクマ現れることは?山口県では目撃情報…関門海峡わずか600m

理由③:生息域縮小による繁殖不全

森林伐採と狩猟によって個体数が減少すると、新たな問題が発生しました。繁殖相手を見つけられなくなったのです。

熊は基本的に単独で行動する動物ですが、繁殖期にはオスとメスが出会う必要があります。しかし、生息域が断片化し、個体数が減少すると、広い森の中でパートナーを見つけることが困難になります。

結果として、たとえ数頭の熊が生き残っていたとしても、繁殖が成立せず、個体群として維持できなくなってしまいました。これは生物学で「アリー効果」と呼ばれる現象で、個体数が一定以下になると回復不可能になるという理論です。
(出典:コトバンク アリー効果

九州の熊は、この3つの要因が重なり合い、ついには絶滅に至ったと考えられています。

かつて九州に熊がいた証拠

現在の九州に野生の熊はいませんが、かつて確実に生息していた証拠は各地に残されています。

捕獲記録

明治から昭和初期にかけて、九州各地で熊が捕獲された記録が残っています。具体的な数字として、この時期に46頭のツキノワグマが捕獲されたことが文献に記されています。また、昭和16年(1941年)にはオスの熊が捕獲され、昭和32年(1957年)には子グマの死骸が発見されました。

宮崎県に残る「熊塚」

宮崎県には、熊を供養するための「熊塚」と呼ばれる墓が今も残されています。これは、熊が希少になった明治以降、狩猟者たちが熊の霊を慰めるために建立したものと考えられています。

当時の人々にとって、熊は単なる狩猟対象ではなく、山の神聖な生き物として畏敬の念を持って接していたことが伺えます。

「熊を撃つと7代たたられる」という言い伝え

九州の狩猟者の間では、「熊を撃つと7代たたられる」という言い伝えが広まっていたそうです。これは、熊が減少し貴重になったことで、むやみに捕獲することを戒める意味があったと考えられます。

このような文化的な記憶も、かつて九州に熊が確実に生息していたことを示す重要な証拠と言えるでしょう。

(出典:産経新聞 「関門海峡突破させるな」クマの生息域拡大に警戒の声 九州で絶滅も山口県で多数の目撃


山口県で熊の目撃情報が急増中

2025年現在、九州には熊はいませんが、海を挟んだ山口県では目撃件数が増加しています。

ここでは、山口県で何が起きているのか・その動きが九州に影響する可能性はあるのか を整理して解説します。

山口県では年間200件超の目撃

九州では絶滅した熊ですが、関門海峡を挟んだ隣の山口県では状況が大きく異なります。2025年度、山口県ではすでに200件を超える熊の目撃情報が報告されています。

(出典:日テレNEWS NNN 全国でクマ被害が過去最悪 九州上陸の可能性は? 海を隔てて650メートルの山口で200件近くの目撃情報

これまで山口県内の目撃情報は主に東部地域に集中していました。しかし、ここ3年ほどで西部地域でも相次いで目撃されるようになり、生息域が西へ拡大していることが確認されています。

興味深いのは、イノシシ用に設置された罠にツキノワグマがかかる事例が発生していることです。山口県農林総合技術センターによると、捕獲されるのは主にオスで、東部から移動してきたものの、メスもおらず元の場所にも戻れず、結果として西部で動き回っている可能性が高いとのことです。

この状況を受けて、山口県は住民への注意喚起を強化しており、一部の地域では登山イベントを中止する動きも出ています。

関門海峡はわずか650メートル

山口県下関市と福岡県北九州市。この2つの都市を隔てる関門海峡の距離は、最も狭い地点でわずか650〜700メートルしかありません。

この近さが、九州住民の間で話題となっています。SNS上では「関門海峡を突破させるな」などの声が上がっています。

熊は海を泳げるのか?専門家の見解

では、実際に熊が関門海峡を泳いで渡ってくる可能性はあるのでしょうか。熊は水泳能力が高く、河川を泳いで渡ることは珍しくありません。

実際、他の地域では熊が海を渡った事例も報告されています。
(出典:FNN プライムオンライン ヒグマは津軽海峡を泳いで渡れるのか? 離島まで20キロ近く泳ぎ切った例も 本州上陸の可能性は【北海道発】

しかし、大きな障壁となるのが関門海峡の潮流の速さです。関門海峡は瀬戸内海と日本海をつなぐ海峡で、潮の満ち引きによって非常に速い潮流が発生します。熊がこの潮流に逆らって泳ぎ切るのは、技術的にかなり困難だと考えられています。

専門家の予測として興味深いのは、時間軸による可能性の違いです。「5年後に熊が九州に渡る可能性はほぼない。しかし、50年後であれば、可能性はゼロではない」という見解が示されています。

(出典:産経新聞 「関門海峡突破させるな」クマの生息域拡大に警戒の声 九州で絶滅も山口県で多数の目撃


四国との違い|同じ島なぜ四国には熊がいるのか?

同じく島嶼部でありながら、九州では熊が絶滅し、四国では辛うじて生き残っています。この違いはどこから生まれたのでしょうか。

四国には現在26頭が生息(絶滅危惧)

九州と同じく本州から離れた島である四国ですが、こちらには現在もツキノワグマが生息しています。ただし、その数は極めて少なく、NPO法人「四国自然史科学研究センター」によると、2024年度に確認されたのはわずか26頭です。

生息地は徳島県と高知県にまたがる剣山系とその周辺に限定されており、「絶滅の恐れのある地域個体群」として指定されています。

(出典:読売新聞オンライン 四国のクマ生息数、これまでの推定上回る26頭を確認…「地域個体群は維持」

四国のツキノワグマには特別な価値があります。遺伝子解析の結果、本州の熊とは異なる進化を遂げた希少な個体群であることが判明しているのです。

(出典:WWFジャパン DNA鑑定を開始!四国ツキノワグマの親子関係に迫ります!

九州と四国の森林環境の違いは

九州と四国で運命が分かれた最大の理由は、生息環境の差です。四国の剣山系にはブナ林など熊の餌資源が残り、山系も連続して生息域が維持されました。

一方、九州は明治期以降の大規模伐採と人工林化で環境が悪化し、生息地が断片化。加えて九州は積雪が少なく冬眠中の捕獲が容易で、狩猟圧も高かったため絶滅に至ったと考えられます。

九州は保護政策前に絶滅し、四国は政策転換が間に合った

日本では明治期以降の大規模な森林伐採や狩猟圧の高まりによって、ツキノワグマの生息環境が急速に悪化しました。こうした反省から各地で保護政策へと転換が進みますが、九州では政策が本格化する前に個体群が消滅してしまいました。

一方、四国では厳しい状況ながらも少数の個体が残り、現在は保護区域の設定や調査体制の強化が進み、生息の維持が続いています。

(出典:環境省 中国四国地方環境事務所 ツキノワグマ四国地域個体群の保全に係る広域協議会


九州の野生動物事情とハンター不足

九州には熊はいませんが、野生動物による被害は他地域と同様に発生しています。

特にシカ・イノシシなどの増加が深刻で、農林業への影響が問題視されています。

ここでは、どの野生動物が被害をもたらしているのか、そしてハンター不足がなぜ問題を深刻化させているのかを整理して解説します。

九州で急増するイノシシとシカ

九州では、シカとイノシシの増加が深刻な問題になっています。シカは繁殖力が高く、天敵だったニホンオオカミや熊が絶滅しているため、捕獲しても個体数が減りにくい状況です。

環境省によると、野生のシカの頭数(推定)は、この20年間で9倍近くとなり、23年度は261万頭だったそう。

また、九州農政局によると、九州7県では平成24年度、前年度を15%上回る農作物への鳥獣被害があり、被害総額はなんと、41億2千万円でした。動物別では、イノシシ被害が21億円と半分を占め、県別では福岡、宮崎両県でそれぞれ10億円を超えています。

九州のハンター不足問題

野生動物の個体数管理において重要な役割を果たすのが、狩猟者(ハンター)です。しかし、九州でも全国と同様に、ハンター不足が深刻な課題となっています。

環境省によると、狩猟免許所持者は23年度、全国で19万8千人。昭和50年度の51万8千人の半数以下となっています。さらに、数の減少に加え、高齢化も深刻で、狩猟者のうち60歳以上の占める割合は、平成2年度に20・3%でしたが23年度は66・2%に達しています。

明るい兆しも

この状況に対応するため、熊本県猟友会は2025年12月に45歳以下の会員でつくる青年部を新設することを決定しました。若手ハンターの育成と技術継承を目指す取り組みです。

 

 
 
 
 
 
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その他、熊本市北区の市食品交流会館(フードパル熊本)で「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」を開催したり、熊本県では、狩猟が生業として成り立つように条件整備を進めるために、野生鳥獣の肉を使う「ジビエ料理」の普及に乗り出しています。


【Q&A】九州の熊に関するよくある質問

Q1. 九州で熊を見たという情報があるが本当?

A. 環境省の絶滅宣言以降も、九州各地から散発的に「熊を見た」という目撃情報は寄せられています。しかし、写真やDNAサンプルなど、確実な物的証拠による確認はされていません。

Q2. 動物園以外で九州で熊を見ることはできない?

A. 残念ながら、野生の熊は九州に生息していないため、自然の中で熊を見ることはできません。

熊を見たい場合は、九州各地の動物園で飼育されている個体を観察することになります。動物園では、ツキノワグマやヒグマなど、さまざまな種類の熊が飼育されており、安全な環境で観察することができます。

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Q3. 九州では熊の代わりにどんな野生動物被害が多い?

A. 九州で最も深刻な野生動物被害は、シカとイノシシによる農林業被害です。


まとめ

この記事では、「熊 九州」というテーマについて、歴史的背景から絶滅した理由、他県との違い、熊以外の野生動物の被害について解説してきました。

本記事のポイント整理

✅ 九州の熊は2012年に環境省が絶滅宣言
半世紀以上にわたって確実な生息確認がないことが根拠

✅ 最後の確実な記録は1957年
明治から昭和初期にかけて46頭が捕獲された記録が残る

✅ 山口県では2025年に200件超の目撃
従来の東部から西部へと生息域が拡大傾向

✅ 関門海峡を渡る可能性は低いが長期的にはゼロではない
距離的には泳げるが潮流が障壁。専門家は「50年後なら可能性あり」

✅ 四国には26頭が生息(絶滅危惧種)
希少な個体群として保護活動が進行中

九州に熊がいないのは、過去の大規模な森林環境の変化と過度な狩猟が重なった結果であることが分かりました。全国的に熊被害が増える中、九州では「熊を戻したくない」という声がある一方で、熊やニホンオオカミがいなくなったことでシカやイノシシが増え、農業被害が拡大しているという別の課題も浮き彫りになっています。

各県では若手ハンターの育成や捕獲体制の強化など対策が進められていますが、依然として問題の解決には至っていません。

今回、私は九州の熊事情を調べてみて、人間の力で生態系の均衡を維持する難しさをあらためて感じました。同時に、何もしなければ九州のように一個体が絶滅してしまう地域があるのだという現実も見えました。

この記事が、ニュースをより深く理解するための一助になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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