熊の耳がいいのは本当?動物界でもトップクラスの聴覚を解説

熊の生態

更新日:2025年11月21日

熊の耳は本当に良い?聴覚の仕組みと驚きの能力を解説

クマは鋭い嗅覚で知られていますが、実は「聴覚」や「視覚」など他の感覚も非常に発達しています。私自身、「熊は音に敏感で臆病な動物」というイメージを持っていたため、では実際にどれほど聴覚が優れているのか、どんな音を嫌がるのかという疑問が生まれました。そこで今回は、クマの聴覚と熊の嫌がる音について整理してみました。

この記事では、

    • 熊の聴覚

    • 熊の聴覚がどのくらい優れているのか

    • 人間や他の動物との違い

    • その他の感覚器官について
    • 熊が嫌がる音とは

について解説しています。ニュースをより深く理解する一助となれば幸いです。

熊は非常に耳が良い

熊は非常に優れた聴覚を持つ動物です。本項では、その特徴や仕組みについて解説します。

熊の耳はどれくらい良い?

森の奥で小動物が草を踏む音、枝が折れる微かな音や葉が擦れる音など、
クマはこうしたわずかな自然の響きを敏感に捉え、周囲の状況を正確に察知しています。

さらに、クマは「音の種類によって行動を変える」ことができます。
同じ「カサッ」という音でも、風が葉を揺らした音か、人間が近づいた音かを聞き分け、「逃げる・確認する・無視する」など、状況に応じた反応を選んでいます

種類によって異なる耳の形と位置

ヒグマやツキノワグマは、頭の上に三角形の耳があり、周囲の音を広く捉えられる構造になっています。一方、同じクマ科でもホッキョクグマは、小さく丸い耳が顔の横についています。

この違いは、それぞれの生活環境に適応した結果です。ホッキョクグマは狩りの際に海に潜るため、水の抵抗を減らすために耳が小さく進化し、さらに水が抜けやすいよう横向きに位置しています

一方、ヒグマやツキノワグマも川で魚を獲ることはありますが、耳まで水に入れる必要がなく、主に視覚で魚を追います。

こうした環境と行動の違いが、耳の形状や位置の差として現れています。

(出典:のぼりべつクマ牧場 耳~知られざるクマの音の世界~(3月10日・11日実施)

人間との比較

クマの聴覚は、高周波や低周波の音に対して非常に鋭敏です。
人間にはほとんど聞こえないような音域でも、クマは正確に聞き分けることができます。

高音だけでなく、足音や地面の振動、落下音などの低音も感知し、
おおよそ20Hz〜30kHzの範囲を聞き取れるとされます。

これは人間の聴力(約20Hz〜20kHz)よりも広いレンジを持ち、
より多様な音の世界を認識していることを意味します。

(出典:クマの耳は高音に敏感な“音の探知機”! 枝の折れる音まで聞こえる脅威の聴力とは)

 熊の耳だけじゃない!他の感覚について

視覚

クマの視力は人間とほぼ同じとされており、特に暗い場所での視覚能力に優れています。

「クマは目が悪いんじゃないの?」と思う方も多いかもしれません。私も調べるまでは同じイメージを持っていました。しかし、実際には必ずしも視力が弱いわけではありません。

クマの視力が弱いと誤解されてきた背景には、嗅覚と聴覚が非常に発達しているため視覚に頼る場面が少ないこと、そして視覚の良いシカと比較されることが多かったことが挙げられます。シカは外敵から逃げるために広い視野で動きを察知する必要がありますが、クマは生態系の頂点に近く、その必要があまりありません。

さらに、クマの目は人間の約50倍もの光を集められるとされ、夜間でも周囲を認識しやすい構造になっています。暗闇でクマの目が光って見えるのは、網膜の奥にある「タペタム・ルーシダム」という光を反射する層の影響です。

この反射層のおかげで、わずかな光を再利用でき、クマは夜でも高い視認性を保つことができます。

(出典:現代ビジネス 殺人ヒグマの恐怖「ナイフのように女の顔面を引き裂いた」夜間視力人間の50倍のヤバすぎる本能

嗅覚

犬の嗅覚は人間の数百万~1億倍といわれますが、ヒグマの嗅覚はその犬の約7~8倍も優れているとされています。風向きが適していれば、3km以上離れた場所にある鹿の死骸の匂いを察知できるほど強力です。

この優れた嗅覚により、クマは餌の場所を見つけたり、ほかの個体の存在を察知したりすることができます。

嗅覚については👇コチラの記事で詳しく解説しています。
熊の嗅覚は人間の何倍?驚異の能力と生態を徹底解説

触覚・パンチ力は「2t」

クマの触覚は鈍感ではないものの、分厚い皮膚と皮下脂肪に覆われており、有刺鉄線に触れてもほとんど気にしないほどの耐性を備えています。そのため、細かな感触よりも嗅覚や聴覚によって周囲の情報を得る傾向があります。

感覚器官ではありませんが、クマの「力」も非常に脅威です。クマの前脚による一撃(いわゆる“パンチ”)は、約2トンの衝撃になるともいわれています。

比較として、大型力士が立ち会いでぶつかる衝撃はおよそ1トンとされており、クマの攻撃力はその約2倍に相当します。

熊が嫌がる音とは?

熊は聴覚が非常に優れているため、音に対してとても敏感な動物です。ここでは、一般的に「熊が嫌がる」と言われている音について解説します。

注意事項

近年では、熊が人間の出す音に慣れてしまっているという報告もあり、「音を出せば必ず熊を遠ざけられる」とは言えません。本記事では、過去に熊が嫌がると紹介されてきた音をまとめていますが、あくまで一例としてご覧ください。

また、ここで紹介する情報の中には、公的機関ではなく個人の発信(動画チャンネルなど)に基づくものも含まれます。情報の信頼性や最新性については、ご自身でも精査したうえで参考にしてください。

熊が嫌がる音

熊が嫌がるとされる音には、突然の大きな音(クラクション・エアホーン・金属音など)や高音(ホイッスル・サイレン)、人の声や鈴の音などが挙げられます。

ただし、こうした反応は個体差があり、最近では人間の生活環境に慣れた熊には効果が
薄い場合もあると報告されています。
毎日新聞 専門家が鈴の効果に警鐘 音に耐性、警戒心薄れる?

以下の動画では、個人が行った実験の様子を紹介しています。

※あくまで個人による観察であり、科学的根拠をもつ研究結果ではありません。実際の熊対策を行う際は、自治体や環境省など公的機関の情報を参考にしてください。


熊が嫌がる周波数がある?

熊が反応するとされる周波数には、一般的に「80~120ヘルツ」の低周波音や「20kHz以上」の超音波が挙げられます。

低周波音は熊が警戒時に発するうめき声に近いとされ、超音波は人間の耳には聞こえない高い音域です。

熊の聴覚特性には個体差があり、すべての熊が同じ反応を示すわけではありませんが、

この周波数に着目して、山梨県のT.M.WORKS社が熊の撃退装置を開発し、岡山理科大学や帯広畜産大学と共同で実証実験を進めているそうです。

【出典:読売新聞 低周波音でクマ撃退、山梨の車部品製造会社が「くまドン」開発…実験ではイノシシにも効果あり)】

Q&A

Q1「熊は人間の話し声も聞こえているの?」

はい、聞こえています。

熊の可聴域(約20Hz〜30kHz)は人間より広く
、話し声の周波数帯(およそ300〜3,000Hz)もしっかり届きます。

そのため、静かな山林では人間の会話や足音などを十分に感知できると考えられています。

Q2「熊の聴覚は他の動物と比べてどうなの?」

熊の聴覚は、犬や猫と同等、またはそれに匹敵するレベルの高感度を持つといわれています。

高周波・低周波の両方を認識できるため、環境音の中から特定の音を聞き分ける能力に優れています。

Q3「熊の耳が良いのはなぜ?」

熊は嗅覚だけでなく、聴覚も狩りや危険回避に欠かせない感覚だからです。夜間や見通しの悪い森で音によって獲物の動きや他の熊の接近を察知します。進化の過程で生存に有利な聴覚が発達したと考えられます。

まとめ

ここまで、クマの優れた聴覚の仕組みから、人間との違い、環境による耳の形の違い、を解説、さらに「嫌がる音」について一部紹介しました。


クマは嗅覚だけでなく聴覚も高度に発達している
人間には聞こえない高周波・低周波まで察知でき、20Hz〜30kHzの広い可聴域を持つ。環境音の中から特定の音を聞き分ける能力が非常に高い。

森の中の微細な音を拾い分け、行動を選択できる
枝が折れる音・草を踏む音などの小さなノイズでも、「風か、人か、小動物か」を識別し、逃げる・確認する・無視するなど反応を使い分ける。

クマの耳の形は生活環境によって異なる
ヒグマ・ツキノワグマは頭上の三角形の耳で広範囲の音を収集。

ホッキョクグマは水中行動のため小さく丸い耳で水の抵抗を減らし、横向きで水が抜けやすい構造に進化。

聴覚の性能は人間より広いレンジをカバー
クマは20Hz〜30kHzの音を認識可能で、特に高音と低音のどちらにも敏感。人間の可聴域(20Hz〜20kHz)を上回る。

視覚・嗅覚も高度に発達し、総合的な感覚判断が可能
視力は人間と同程度だが暗所に強く、夜間は約50倍の光を集められる。嗅覚は犬の7〜8倍と言われ、3km先の死骸も察知できる。

熊が嫌がるとされる音は「個体差」が大きく万能ではない
クラクション・金属音・ホイッスルなどが従来“嫌がる音”とされてきたが、近年は人間の生活音に慣れた個体も多く効果は限定的。

低周波・超音波に反応する傾向から撃退装置の研究も進む
80〜120Hzや20kHz以上の音への反応を利用し、企業と大学が共同で撃退装置を研究しているが、あくまで実証段階。

クマは人間より広い音域を聞き分けられるほど耳が良い動物だと分かりました。
最近の「熊鈴が効きにくい」というニュースは、実は人間の音に慣れてしまった熊が増えているという要因が大きそうです。

本記事が、皆さまがニュースの深くを理解する一助になればうれしいです。最後までお読みいただきありがとうございました。

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